アルティマⅡRCサイトテクニカルノート② ~サイトの重さとバランスって?~

ブログをご覧の皆さん、こんにちは!

渋谷アーチェリー製造部門担当の梅澤です。

先日投稿した【アルティマⅡRCサイトテクニカルノート① ~新しいサイトを作った訳は?~】は読んで頂けたでしょうか。第1回をまだお読みで無い方は是非下記リンクをクリックして頂き、前回記事も読んでみてくださいね。
該当記事→ 【アルティマⅡRCサイトテクニカルノート① ~新しいサイトを作った訳は?~】

さて、そんな本日は、テクニカルノート第2回~サイトの重さとバランスって?~をご紹介します。

私たち渋谷アーチェリーは、40年以上サイト作りをしています。その間に作られたシブヤサイトのほとんどが“軽さ”を重視して設計されています。過去にはこんなサイトも生産していました。

これは【シブヤAR-10】という1979年に発売されたサイトで、エレベーションバーを極端に短くすることで軽さを追求し、上下への可動範囲の狭さを2段階に設計されたマウントに取付ける構造にすることで補っています。登場して直ぐにダレル・ペイス選手(USA)が当時の世界新記録を樹立したことは長年アーチェリーをやられている方はご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そもそも、サイトは弓の片側に取付けられ、且つ前方に飛び出しています。この部分が重いと弓の前後左右全てのバランスに影響が起きてしまい、スタビライザーのウェイトの調整で好みのバランスにしようとした時に、弓全体が想定より重くなってしまったり、そもそも好みのバランスへ調整出来ないといった事例が起きやすくなります。そのような理由で、渋谷アーチェリーでは、【サイトは(十分な強度/再現性を確保した上で)軽ければ軽いほど良い】という設計思想でサイト作りを行って来ました。

ではサイトを手っ取り早く軽く作ろうとしたらどうなるでしょうか?サイトの部品で一番大きいのはエクステンションです。

これを細くしたり、軽いプラスチックで作ればすぐに軽くなりますが、エクステンションが柔らかくなるので射った時に振動が大きくなってしまいます。使用頻度によっては再現性にも悪影響出てしまう可能性も考えれます。

もう一方で、サイト自体のバランスという問題もあります。サイト全体が軽くても、重さが前方に偏っていれば、アーチャーが弓を持った時に前下方向引っ張られる感覚が強くなってしまいます。ということは、【サイトの前方をより軽く出来ればバランスへの影響も少なく強度と再現性も保てる】ということになります。前出のAR-10サイトや現行のアルティマRCサイトもこのようなコンセプトで設計されています。

今回発表されたアルティマⅡRCサイトは、よりこれを推し進めたサイトになります。サイトの前の部分と後ろの部分をそれぞれ分けて重さを量ってみると下記のような重さとなります

(全て同じサイトピンを取付けての測定)

現行のアルティマRCサイトは

前側が約119g、後ろ側が約99g、合計218g

他社製品Aサイトは

前側が約131g、後ろ側が約78g、合計209g

アルティマⅡRCは

前側が約107g、後ろ側が約97g、合計204g

数字で比べるとサイト全体の重さの差よりも前側/後ろ側の重量比率は結構差があることがわかります。

現行のアルティマRCサイトも前側は軽量なのですが、アルティマⅡはさらに前側だけで一円玉12枚分、全体で一円玉14枚分のボリュームをそぎ落としています。財布の中に1円玉が14枚ある場合には是非出して見てください。結構な量に思えると思います。

サイトの前側は上下左右の可動・固定を行うサイトの要の仕組みがあるのでボリュームを減らすにはその機構に細かく配慮しないとなりません次回は、そんなアルティマⅡの軽量化の詳細と機構の仕組みについて書いていきます。

〔次回 第三話~仕組みとボリュームダウン~ に続く〕