~ステファン・ハンセン選手Q&Aその2

こんにちは、世田谷店の種部です。
今日はステファン・ハンセン選手のQ&Aの第2部をお届けします。
Q:何か筋力トレーニングをやっていますか?重いセッティングの弓を支えられるようになるためにおすすめのトレーニングがあれば教えてください。

ステファン・ハンセン選手(以下Sと表記):実はトレーニングは特にやってないんだ。というのも、重いセッティングと言うけれど実際には5キログラムとか4キログラムとか、人が普通に支えられる重さだし、弓を引きながら支えるているわけだし。筋力というよりは慣れの問題だと思う。何日か射ち続ければ、重さに自然に慣れて、重いと感じなくなるもの。
 見ての通り、ぼくはかなり小柄だし力が強いわけじゃない。たくさん弓を射つことで自然に重さに慣れただけで、別にすごいことではないよ。アーチェリーのために特にウエイトトレーニングや何かの筋トレを日々の練習のルーティンには入れていないけど、「重い」弓を引くことがぼくにとってはトレーニングになっているといえるかな。

Q:毎日の練習のルーティンについて教えてください。

S:今は試合の予定があまりないし、モチベーションを保つのが難しい。練習量は多くないんだ。いつもは7時か8時ぐらいに起きて1、2時間かけてニュースを見たり、朝ごはん食べたり、株価をチェックしたりする。それから練習するんだけど1時間から2時間くらいで、あまり長い時間は射たない。ぼくは1度に長い時間射つよりも、短い時間で何度かに分けて練習する方が良いと思っている。長い時間射つと疲れてきて、筋肉にもシューティングにもプラスにならない。
 シューティングのクオリティを重視しているので、長時間射ち続けることはしない。(そんなに長く射ち続けたら)後半はただ弓を射っているだけで練習にならなくなる。練習はただ弓を射つためにやるわけじゃなく、目標を達成するためにやるものだ。
 2時間くらい射ったら昼食を取って、午後からも何時間か練習するというのが、普段のルーティン。今は1日に1回しか練習はしていない。あとは飼っている犬と遊んだりしている。練習しすぎないように心掛けているんだ。今日は自分のシューティングに気なることがあったり、友達一緒に射ったりしたので、結果的に4、5時間射った。とても疲れたよ。身体的にもね。そのうち何時間かはただ射っているだけで、楽しかったけれど練習としてはほとんど意味がなかった。時にはそういう日があっても良いとは思うけど。
 長時間練習することもあるよ、例えば長いインドアシーズンの後にアウトドアを射ち始めた時のように、アウトドアの射ち方に慣れるためにたくさん射ちたいと思うこともある。そういう時は何かを意識する必要はないし、距離を射つことに慣れるために長時間射ち続けるんだ。
 しかし、試合に備える段階では、たくさん射つことよりも、練習の質を重視すべきだ。実は、ぼくは練習で何射したかカウントしたことがない。自分が納得するまで射つだけで、100射だろうが400射だろうが関係ないし、気にしたことがないんだ。
 たとえば、自宅の18mレンジで数回試射をした後に18mラウンドを30射してやめることもある。試合の感覚を確かめるために、30射(試合と同じように)真剣に集中して射つわけだけど、そういう30射はただ漫然と射っている60射や90射に勝るとも劣らないと思う。試合で射っているような集中力で、スコアを意識して(集中して短時間)射ち、また後で同じような短い時間の練習をすることはあるけれど、1日に何射したかはカウントしない…何年も前にコーチに何射したかカウントしろと言われてやったことがある以外はね。
Q:弓具に関する質問です。どんなタイプのドット(スコープの照準点)を使用していますか?また、アウトドアやインドアなど、競技によってドットを変えますか?

S:7倍のレンズに0.039(約1ミリ)インチの光ファイバーピンを使っている。スコープフードの周りに巻き付けられる最も太いサイズだ。アウトドア、インドアもフィールドも、ずっと同じレンズ/ファイバーピンのセットアップで射っているよ。
 3Dだけは違うけど。3Dではもっと径の大きなスコープとより細いファイバーピンに替える必要がある。見たい範囲や光の当たり方など、いろいろと条件が違うからね。

Q:ピープサイトのサイズは?またピープサイトとスコープの間にどのくらいのギャップがありますか?
S:ハムスキー(インサイトピープシステム)のたぶん2番目に小さいホール(3/64インチ)で、Aのクラリファイヤーを使っている。(スコープフードとピープホールの大きさの関係は)意識したことないけど、スコープとピープホールのサイズはほぼ同じだね。ぼくにとって重要なのはクリアに見える(的面がはっきり見える)かどうかで、それが精度の高いエイミングの鍵だと思っている。ピープホールが(スコープフードに対して)大きすぎると(スコープを)真ん中に持ってくるのは難しそうだね、ぼくは実際に試したことないからどういう感じなるのかわからないけど。
 以前、一番小さいピープホール(1/32)を使っていたことがある。一番小さいピープホールは的がクリアに見えるのは良いけど、ちょっと光の加減が変わるだけですごく暗くなって的が見づらくなってしまった。だから、ピープホールをワンサイズ大きくしてクラリファイヤーを使用するようにしているんだ。とても暗い場合でも的がはっきり見えるようにね。おかげで、ベガスシュートのような照明が良くない試合でも、問題なく的をはっきり見ることができる。ニーム(フランスで行われるヨーロッパ最大のインドアトーナメント)は的の上にスポットライトがあるからそういう心配はないね。状況に応じて何か(弓具を)変える必要がないようにしている。何か変えると慣れるのに時間がかかるからね。
Q:近射で的を狙わないで練習をすることはありますか?
S:天気が悪くて外で射てない時に室内で的を貼って射つことはあるけど、基本的に的なしで近射をすることはないね。アーチェリーは楽しいもののはず。的なしで近射するのは退屈すぎるから、楽しいと思える練習をするようにしている。
 だから練習する時は、いつもスコアをつけるようにしているんだ。ぼくは試合が好きなので、例えば(試合と同じように)30射で何点出せるかを意識して射つ、みたいなかんじでほとんど毎回スコアはつけているよ。でも、とても調子が悪い時にはスコアはつけないよ。自分がどんなにひどいかを確認してもしょうがないからね。調子が悪くない時はもちろんだけど、何か新しいことを試すときも必ずスコアをつけるようにして、新しく試していることが自分にプラスになっているかどうかチェックしている。
Q:スコープの話が出たついでに、アルティマCPXIIサイトにあまりなじみのない視聴者からの質問です。サイトへのスコープの取り付け方はどうやっているか教えてもらえますか。

S:びっくりするぐらい簡単だよ。ぼくが使っているシュルードの(ミニマグ)スコープにはサイトへ取り付ける部分にカットアウトがあるので、サイトのスコープを受けるパーツをスコープのカットアウトにはめ込んでスクリューで止めるだけだ。アルミのパーツ同士がはまって固定されているので、スコープには全くガタツキがないし、万が一スクリューが少し緩んだとしてもスコープは動かないようになっている。
Q:エイミング中に意識して(ドットをコントロールしようとして)いますか?それともドットを(自然に動くままに)泳がせていますか?

S:ぼくはどこにドットがあるかを意識しているね。時々意識しすぎることがあるくらいだ。(エイミング中は)ドットを的の真ん中にキープすることに意識を集中している。
 例えば18mだったら、(インドア的の)大きい10点リングの中にドットをキープするのが普通だ。大きい10点というのは、ベガスシュートの10点というかリカーブの10点のことだね。ぼくの場合、ドットがそのあたりにある時にリリーサーが切れれば、矢はインナーテンに当たることがわかっているから、ドットが(リカーブの)10点リングの中を漂っている状態でキープすることを意識している。
 緊張したり、何か余計なこと、例えばリリーサーを切ることを意識しすぎたりした時には、ドットの動きが大きくなることがあるけど、そうなるとますますリリーサーを切るのが怖くなる。緊張するとドットが動く範囲が9点まで広がってしまうと、ドットを的の真ん中にキープすることに集中できなくなって、うまく射党とすることに意識が行ってしまうんだ。

ドットがアウターテンの中を漂っている状態

ドットの動きが大きくなった状態

本日はここまで。次回はターゲットパニックの経験談とリリーサーの使い方についてお伝えする予定です。お楽しみに!