~レジェンド、デイブ・カズンズ選手のQ&Aライブ その3

世田谷店の種部です。デイブ・カズンズ選手のQ&Aの第3回目はリカーブからコンパウンドへ転向しようとしているアーチャーへのアドバイスです。
デイブ・カズンズ選手Q&A その3
Q: 現在リカーブを射っているアーチャーからの質問です。リカーブアーチャーがコンパウドを始めるときに失敗しないためのアドバイスをお願いします。またどんなリリーサーがおすすめですか?
Dave Cousins(以下Dと表記):
リカーブボウをある程度射っている人の場合、ヒンジリリーサーの射ち方を理解しやすいと思います。リカーブボウでは弓の抵抗に対して力をかけ続けていなければなりませんし、ある一定の引き尺のところで、引き尺を大きく変えることなくテンションをかけながらホールディングすることを習得しています。さらに正しい射ち方をしているなら、(エイミングしながら)押手側を張って、弓がぶれないで的に向かうように方向性を与える押手の使い方をマスターしているはずです。

 最も大きな違いは、リカーブボウではクリッカーを切るために(ホールでイング時に)引き尺が実際に長くならなければなりません。それがリカーブボウでクリッカーを使って射つ時の基本原理です。一方コンパウンドボウではショットエクスキューションの際に引き尺が伸びても縮んでもいけません。設定した引き尺でカムが回りきって止るコンパウンドボウでは、フルドローした後は引き尺を変化させることなくテンションをかけていくことが求められます。そこが(リカーブボウからコンパウンドボウに転向する際に)適応しなければならない最大のポイントと言えるでしょう。
 そう考えると、ウォール(カムが回りきった時に止まる感覚)が硬めの(コンパウンドボウ)にすれば、引き尺の長さを変えながらクリッカーを切って射つという手順を忘れて、(カムが回りきったところで)止まってテンションをかけていくというやり方をマスターしやすいと思います。リカーブで学んだテクニックは無駄になりませんが、(リカーブに比べると)全体的な動作や伸び合いは大幅に凝縮され、ごく小さなものになるということです。
 私の考え方では、コンパウドの射ち方はリカーブと非常によく似た組み立て方なので、リカーブの経験者はコンパウンドを射つための基礎は既にできていると言って良いでしょう。リリーサーについてはヒンジリリーサー(いわゆるバックテンションリリーサー)がリカーブアーチャーには合うと思います。
Q:同じくリカーブからコンパウンドへ転向を考えているアーチャーからの質問ですが、例えばスープラフォーカスはコンパウドを始めるときの1本目の弓として良いと思いますか?
D:
引き尺にもよりますね。リカーブボウはだいたいが68インチから72インチだと思いますが、スープラフォーカスXLのようなアクセル間が40インチの弓は違和感ないのではないかと思います。ただ、引き尺が28インチ以下の場合は、アクセル間が37インチのノーマルのスープラフォーカスが良いと思います。アクセル間が長くなればなるほど、(フルドローした時の)ストリングの角度が大きくなる(緩やかになる)ので、(リカーブアーチャーにとっても)アンカーリグした時になじみやすいと言えます。
 リカーブではあごの下にアンカーリングしますが、(コンパウンドでは)その引手を45度くらい回転させてあごに付けて、トリングは鼻の先端につけます。(ストリングを鼻の先端に付けるのは)リカーブアーチャーが普段やっていることだと思いますが、引き尺によってアクセル間が38インチか40インチのどちらがしっくりくるかが決まります。目安として引き尺が29から30インチくらいだとしたら、アクセル間40インチ(28インチ以下なら37)が良いと思います。

デフレックスハンドルが魅力のスープラフォーカス

Q:アンカーの話題が出たので、コンパウンドのアンカーポイントの設定の仕方を教えてください。コンパウンドではリカーブほどしっかりしたアンカーの感覚がないように思うのですが、毎回同じアンカーを再現するためのチェックポイントはありますか?
D:アンカーについては、できるだけ多くのチェックポイントを持つというのが私の考え方です。確かにピープサイトというチェックポイントもあるじゃないか、と思うかもしれませんが、ピープサイトはアンカーのチェックポイントとしては最も信頼できない要素なのです。
 コンパウンドのアンカーリングの基本について言うと、まず何よりも先にリリーサーの持ち方をどうするかが重要です。リリーサーを第一関節と第二関節の間でホールドするのが、私が考える基本の位置です。こうすることによって、リリーサーをホールドした手をアンカーポイントにつける時に、手の甲がまっすぐに伸びてフラットな状態になります。これはリカーブでタブを使ってストリングに引き手を取りかけるのと同じ状態ですね。
リリーサーは第一関節と第二関節の間にホールドする

 手の甲をまっすぐに伸ばしてフラットにする理由は、例えばリリーサーに指を深くかけて握り込むと手の甲が曲がった状態になります。その状態を維持するのには何かしらの筋肉が関わることになり、その筋肉のテンションを一定に保つ必要があります。一本の矢を射つ間はもちろんですが、毎射、毎射(手の甲が曲がった状態を)全然一定に保てるはずがありません。
リリーサーをホールドする時には、リカーブアーチャーがタブを使ってストリングに取りかけた時の手の形を思い浮かべてください。私の考えでは両者は同じ形であり、それが(真っすぐでフラットな形であることが)重要な基本だと言えます。

 では、その手をアンカーポイントに持ってきてみましょう。まっすぐでフラットな手の甲は、フルドローした時にあごのラインの前、中間、後ろのどこにつけてもアンカーポイントを形成することができるので、垂直方向の確かなチェックポイントになるのです。 どうやってアンカーするかというと、(人さし指と中指の付け根で形作られた)V字をあごの角にあてるのです。こぶしではなくV字の部分をあごの角につけます。V字の一方の指をあごの角の下側に、もう一方を上側につけると、手は水平でも垂直でもなく、自然に45度くらいの角度になります。この状態であごの角のラインのどこかに(V字を)つけて垂直方向のチェックポイントとすることが、(この後お話しする)前後方向のチェックポイントと合わせてコンパウンドの正しいアンカーポイントを形成するための基本です。
 アンカーポイントのもう一つのチェックポイントは前後方向のポイントです。リカーブの経験があるアーチャーなら、一定の引き尺のところでアンカーリングすること、鼻の先端や唇の端(にストリングが付くこと)で前後の位置が決まるというやり方をそのまま(コンパウンドのアンカーにも)活かすことができます。その点はコンパウドでリリーサーを使う場合もリカーブと同じなのです。
ストリングを鼻の先端につけるという点は、リカーブもコンパウンドも同じ

 コンパウンドボウでリリーサーを使用する場合のアンカーリングの基本要素のラストは、ピープサイトです。残念ながら、ピープサイトはアンカーのチェックポイントとしては最も信頼性の低い基本要素と言えます。というのも、2番目(垂直方向)と3番目(前後方向)のチェックポイントが確立されていなければ、ピープサイト(を覗こうとすること)によって、正しい位置にアンカーすることが妨げられてしまうのです。
 ピープサイトの位置(高さ)は、引手があごの角に沿って前後のどこかにつき、なおかつストリングが鼻の先端や唇の端など顔のどこかについた時のアンカーの感覚をベースにして決められなければなりません。その上で、ピープサイトの上下の位置は、ストリングの真後ろに顔を持ってきたときに自然に覗ける位置に合わせます。そうすることによって、顔向けを一定に保つことができるのです。 ピープサイトはアンカーポイントに合わせて決めらるべきで、その逆(ピープサイトに合わせてアンカーリングすること)はないということです。
 リカーブからコンパウンドへ転向する場合の注意点、いかがでしたでしょうか。
 世田谷店ではリカーブからコンパウンドに転向したスタッフが弓具選びだけでなく、技術面のアドバイスも対応いたします。コンパウンドに興味があるリカーブアーチャーの皆さん、気軽にご相談ください。コンパウンド体験もできます(要予約)。
 次回のデイブ・カズンズ選手のQ&Aは、誰もが悩むリリーサーの切り方、ショットエクスキューションのポイントについてです。もう一つの誰もが気になっているテーマ、チューニングについては第5回で取り上げる予定です。