~レジェンド、デイブ・カズンズ選手Q&Aライブ その6

こんにちは。世田谷店の種部です。今回もチューニングがテーマです。センターショットの調整と合わせてペーパーチューニングやベアシャフトチューニングの重要性(いかに重要でないか)についてわかりやすく解説しています。
デイブ・カズンズ選手Q&Aその6
カズンズ選手が新しい弓をセットアップする時の手順の続き
④ノッキングポイント
  カムタイミングの次はノッキングポイントとセンターショットの設定です。まずノッキングポイントをつけますが、必要な道具はTゲージ、もしくはメジャーだけです。レーザーアラインメントツールは必要ありませんし、水準器で矢の水平を出したり、弓やストリングに水準器をあてたりする必要もありません。Tゲージやメジャーで測って目盛を読みさえすれば良いのです。 
 リカーブを射ったことがある人なら、弓を組み立てた後にいつもTゲージでティラーやストリングハイトをチェックすると思います。コンパウンドでも難しく考えないで、Tゲージで計れば良いのです。 

H=ノッキングハイト

 私の場合、ノッキングポイントの高さは使用するシャフトの太さに合わせて設定します。議論の余地があるのは知っていますが、私はレスト取り付け穴、バーガーボタンホールとも言いますが、を基準にノッキングポイントの高さを計ります。なぜならレスト取り付け穴は弓の中で変化することがない部分だからです。レストのランチャーブレードの先端から計って、ノッキングハイトが1/8インチだったとしましょう。射っている間に何か問題が生じたり、気になることがあってノッキングポイントをチェックしたら1/8インチではなく1/4インチになっていた場合、レストが動いたのか、ノッキングポイントが動いたのか判断するのは非常に難しいと思います。レストやノッキングポイントのようにどちらも動く可能性がある二つの要素同士で測るべきではありません。 
 ハンドルに開けられた穴から計れば、その穴は絶対ずれたりしないので…もし  ハンドルに開けられた穴がずれたとしたら、何か重大な問題が弓に起きているわけで(チューニングどころではありませんね)。 
 レスト取り付け穴から計る場合、先ほど使用するシャフトのサイズによってノッキングハイトが変わると言いましたが、インドア用の大口径シャフトの場合、バーガーボタンホールの一番低いところからだいたい1/4~3/8インチのところにその矢のノックの上側が来るように設定します。 
 アウトドア用のACEやプロツアー、ナノプロのような極細のシャフトの場合は、口径が小さい分少し低めに設定します。だいたい1/8~3/16インチです。 
 次にレストのランチャーブレードの角度を設定します。ランチャーブレード固定式のレストの場合、目分量で立ちすぎず、寝すぎない角度、だいたい30度に合わせます。ランチャーブレードが立ちすぎるとブレードが硬くなったのと同じ効果が生じて矢が跳ねやすくなります。ドローイングした時に矢がランチャーブレードから落ちて、イライラしたことがある人がいると思いますが、そういうことが起きやすくなります。矢に対して(矢の上下の動きに対して)クッションの役割を果たすスプリングというよりは、削岩機のように振動を増幅するようになるのです。 
 反対にランチャーブレードが寝すぎていると、ブレードの硬さが軟らかくなったのと同じ効果が生じ、より大きくしなり、うねることになるので、やはり矢がランチャーブレードから落ちやすくなります。また、極端に寝すぎていると、矢が発射される際のしなりが大きかった時にランチャーブレードが取り付けられている軸にシャフトが当たる恐れが出てきます。 
 ノッキングポイントを取り付けてランチャーブレードの角度を目分量で30度ぐらいに設定したら、次にレストの高さを設定します。矢をストリングにつがえてレストに乗せて、矢がストリングに対してだいたい垂直になるようにレストを上下に動かして調整します。文字通り目分量で構いません。というのもセンターショットと同じで、いったんチューニングを始めたらどうせ調整のために動かすことになるものなのです。 

⑤センターショット
 次にセンターショットの初期位置を合わせます。こちらも文字通り目分量でハンドルの真ん中にストリングを通してみた時に矢がストリングに重なるようにレストの左右を合わせます。ほとんどの場合(チューニングの過程で)は動かすことになるので、ごくまれに運よく動かさなくてもチューニングがぴったり合うというようなこともありますが。一つ覚えておいてほしいことは、チューニングの過程でアローレストを極端に弓の中心から外に外れたところや、逆に弓の中心から内側(サイトウインドウ側)に入りすぎるほどアローレストを左右に動かさなければならない場合には、(センターショット以外の)何か別の問題が弓のシステムに起きているかもしれないということです。 
だいたい真ん中に合わせればOK

 その場合はレストを初期設定に戻してケーブルガードやカムタイミングを調整したり、スタビライザーセッティングを見直したりしてみる必要がありますが、それよりもまず、弓と人間が接するグリップと手の接し方です。グリップにどう手を当てているかだけでなく、グリップにかかる圧が内側(親指側)と外側(小指側)にどうかかるかがとても重要なのです。グリップに正しい形で手を当てていてもグリップにかかる圧が正しく配分されていないと、弓を(左右に)回転させる力が働き、それが矢飛びに大きく影響します。弓によってはそういうトルクに対応するシステムが搭載されています。シム(スペーサー)を入れ替える、無段階でカムの位置を微調整できたりするシステムでカムの位置を変える、リムポケットを動かしてリカーブボウのハンドル/リムアラインメントを調整するようにカムの位置を変えることによってセンターショットのチューニングに劇的な変化を与えることができます。(ペーパーチューニングなどで)良い結果を得るためにセンターショットが「センター」から大きくずれる場合やそもそもチューニングが全く合わない場合は、一度グリップに当てた自分の手を見てみることです。おそらく何か余計な力を加えるようなことをしている可能性があります。特に、ペーパーチューニングで左向きの破れ方が出る(この場合ノックが左に向くことを意味しています)場合で、何をやっても左向きの破れ方が解消されないのに、友達が同じ弓を射ったらきれいな穴が開いたり、右向きの穴が開いたりする場合はチューニングではなく射ち手の方の問題ということになります。
トルクチューニング
 私がクリニックの際によく行うデモンストレーションがあります。まず自分の弓を使ってペーパーチューニングできれいなブレットホールを射ってみせて、18mでベアシャフトと羽根付きの矢を10点に入れて見せます。この時重要なことはベアシャフトが上向きや下向き、横向きなどにならないで真っすぐに、羽根付きの矢と平行に刺さることです。次に、意識的にグリップにトルクをかけて射ってみせます。するとペーパーに3インチ(7.6センチ)もの左向きの裂け目ができます。さらに逆向きのトルクをかけて射つと右向きの裂け目になります。また、ベアシャフトを射つ際にトルクをかけて射ってみせると、トルクのかけ方によってベアシャフトは右に逸れたり、左に逸れたりします。こうしてグリップの手の当て方が正しくなかったり、ハンドルが回転するような力のかけ方をしたりするとチューニングが全く変わってしまうということを実証して見せるのです。
 それから、18mで3射のトルクチューニング(意図的にトルクをかけてグルーピングをチェックするチューニング法)を行います。まず普通に射って矢が的の真ん中に当たることを確認したら、2射目は弓を握って意図的に弓に右回転のひねりを加えて射ち、3射目は意図的に弓に回転のひねりを加えて射って見せるのですが、この時3射とも10点リングの真ん中に当たります。これは私の弓が、「レストの位置」と「矢の長さ」と「サイトの照準距離」の3つの要素がトルクの影響を受けないようなバランスに調整(トルクチューニング)されているからなのです。
 トルクをかけて射った矢が3本とも10点に刺さるのなら、ペーパーチューニングで大きく左に裂けようが、大きく右に裂けようが、どうでもよいと思いませんか。要するにより重要なことは何かをよく考えなければならないということです。私がフィールドアーチェリーの試合の後でこれがあったらもっと良いスコアが射てたと思うとしたら、「もっと良いチューニングの弓があれば良かったのに」と思うか「もっと正確なサイトテープ(距離ごとの目盛)があれば良かったのに」と思うか、どちらだと思いますか?正解は常に「正確なサイトテープ」、もしくは「良い射をもっと繰り返すこと」です。
 遅かれ早かれその弓で試合に出ることになるわけで、いつまでもチューニングばかりしているわけにはいかないのです。弓の精度を高めるための要素をある程度調整することができたのに、チューニングができているように見えないことがあるということです。いろいろなことを突き詰めていくと、結局のところ私たちがやっているアーチェリー競技では、射った矢がどこに刺さったかで点数が決まり、順位が決まるのであり、どういう飛び方をしたかは問われないのです。完璧なチューニングを達成した時の満足感を得るために、最新で最高級の弓具をそろえたり、ありとあらゆるチューニングの知識を求めたりすることに多くの時間と労力を費やすのはたいへんだと思いますが、完璧なチューニングをすることは必ずしも必要ではないのです。
 ある程度チューニングしたら、その弓を使いこなすことと(自分の射ち方に合わせた)弓の調整を行うことに時間を割くべきです。(その調整とは)オーバードローマウントを使ってレストの(前後の)位置とサイトの照準距離、矢の長さの3つの要素のバランスを取って、トルクのかけ方が変わっても矢が同じところに飛ぶようにすることです。すごいチューニングができているかどうかは関係ないのです。
今回はここまでとさせていただきます。チューニングについては、デイブ・カズンズ選手が以前からペーパーチューニングやベアシャフトを重視していないのは知っていましたが、あらためて聞くとシンプルで合理的な考え方に基づいているのがわかりますね。
次回はアロースパインとベアシャフトチューニングについて取り上げる予定です。ちなみに今回デイブ・カズンズ選手が推奨していた「トルクチューニング」については、世田谷店スタッフ河本が以前にブログで取り上げているのでそちらも参照してみてください。
リンクはこちら→「河本が全日に向けて取り組んでいること~トルクチューニングについて~」