~レジェンド、デイブ・カズンズ選手Q&Aライブ その7

こんにちは。世田谷店の種部です。今回はスパインについて取り上げます。皆さんは自分が使っている矢のスパインが合っているかどうか、どうやってチェックしていますか?ペーパーが左に裂けたら(ノックが左を向いたら)軟らかいとか、ベアシャフトが羽根付きよりも左に行ったら軟らかいとか、いろいろ言われているみたいですが、私自身の経験からリカーブのような普遍的な法則性がないように思っていました。今回の質問は私が普段疑問に思っていることでもあります。はたしてデイブ・カズンズ選手のスパインの合わせ方はどうなのか?興味津々ですね。 

ベアシャフトチューニング

デイブ・カズンズ選手Q&Aその7   
Q:いくつかアローシャフトとチューニングの両方に関わる質問が寄せられています。まずはベアシャフトチューニングで矢のスパインが軟らかいか硬いかどうやって判断しますか?
デイブ・カズンズ選手(以下Dと表記します):コンパウンドのベアシャフトチューニングに関してまず断っておかなければならないのは、ハンドルやストリングを介して伝わる人間的な不確定要素の影響によって、(ベアシャフトがどう飛ぶかが)大きく左右されるものだということです。グリップの仕方が悪かったり、グリップの左右どちらかの側に余計な力をかけたり、もしくはストリングが顔に食い込んでいたりした場合、ベアシャフトチューニングはパンドラの箱を開くようなもので、悪夢の始まりとなる可能性が高いと言えます。 
 ベアシャフトを20ヤード(18m)より長い距離で射つことは、矢を壊しに行くようなものです。私自身、あまりにひどい飛び方で弓から出たベアシャフトが(まっすぐな矢飛びを)復元しようとするあまり、怒った蜂の群れのような音を立てて風を切って飛んで行ったのを見たことがありますが、どんな矢のチューニングも、弓のチューニングも、そこまでひどい矢飛びを解消する助けにはなりません。弓を正しくホールドし、ストリングが顔に食い込まないようにすることで初めて解消されるのです。 
ペーパーチューニング

 スパインが軟らかいか硬いかの判断については、現実には700番の矢から250番の矢まで(スパインが異なる矢を)射っても、ペーパーチューニングで同じように穴が開くことがあるということをお断りしておきます。ベアシャフトチューニングから、シャフトが硬いか軟らかいかについてあまり多くのこと教えてくれません。矢がちゃんと作られているかどうかを知ることはできるかもしれませんが、ベアシャフトチューニングからわかることは、むしろ弓のセッティングやシューティングフォームと弓の相性、あなた自身の射ち方についてです。  
 シャフトが軟らかいとか硬いとかいうことについて言うと、私はインドア用に2種類のイーストンのアルミニウムシャフト、(X7)の2315と2712を使用しています。この二つのシャフトのスパイン値は(21712が)225で(2315は)348か350なので、硬さの幅が極めて広いといえるでしょう。デフレクション(既定の負荷をかけた時にたわむ量)が0.125インチもあります。(2315と2172の)2種類のシャフトの間には3種類の硬さのシャフトがふくまれているんじゃないでしょうか。(イーストンのラインナップには)デフレクションの値が0.050インチ変わるごとに、それぞれシャフトサイズが用意されているのですから。 
 ところがこの2種類の矢は、両者の間には大きなスパインの違いがあるにもかかわらず、私の弓で射った時にはどちらのベアシャフトも的の真ん中に同じところにまっすぐ刺さります。これはどういうことかというと、弓が正しくセッティングされてレストのセンターショットが合っていて、私も弓を正しく支えており、矢が正しく射ち出されているということです。実はこの2種類の矢の構成には著しく違う点があります。シャフトの長さは同じですが、ポイント重量が大きく異なります。27径の矢には300グレインのポイント、23径の矢には160グレインのポイントを使用しているのです。もし両方の矢のポイントを同じ重さ(300グレイン)にして私の弓で射ったら、2315は悲劇的に軟らかくなり、右射ちのアーチャーの場合、ベアシャフトはかなり左に外れるでしょう ところがこの2種類の矢は、両者の間には大きなスパインの違いがあるにもかかわらず、私の弓で射った時にはどちらのベアシャフトも的の真ん中に同じところにまっすぐ刺さります。
 これはどういうことかというと、弓が正しくセッティングされてレストのセンターショットが合っていて、私も弓を正しく支えており、矢が正しく射ち出されているということです。実はこの2種類の矢の構成には著しく違う点があります。シャフトの長さは同じですが、ポイント重量が大きく異なります。27径の矢には300グレインのポイント、23径の矢には160グレインのポイントを使用しているのです。もし両方の矢のポイントを同じ重さ(300グレイン)にして私の弓で射ったら、2315は悲劇的に軟らかくなり、右射ちのアーチャーの場合、ベアシャフトはかなり左に外れ、しかも的に対して対角に射ったかのように斜めに刺さることになるでしょう。逆もまた真なりで、27径の矢に160グレインポイントを入れて同じ弓で射った場合、ベアシャフトは右に外れ、反対の対角から射ったように斜めに刺さることになります。 
 ベアシャフトチューニングでは、単にシャフトのスパインだけではなく矢がどう作られているか、シャフトの長さ、ポイント重量、ノックのデザインなどいろいろな要素が関わってきます。ベアシャフトチューニングからは、シャフトの硬さそのものについてはあまり多くのことはわかりませんが、矢の作りが(あなたの弓に対して)適切かどうか、あなたが弓を正しく支えているかについて多くのことがわかります。最近ではベアシャフトチューニングはもはや本来のチューニングのためというよりは、見せびらかすためのもの、「見てくれ!べシャフトチューニングがこんなに上手く行った。この弓は今まで作られた最高の弓だ!」とSNSにアップするための見世物になっています。 ベアシャフトチューニングは矢のしなり方の反映であり、SNS映えするもののひとつにすぎず、シャフト自体のスパインの値やその矢が自分に合っているかどうかについてベアシャフトチューニングから得るものはあまりありません。それよりも矢のグルーピングの状態を見ることで、スパインの値についてより多くのことがわかります。ペーパーチューニングやベアシャフトチューニングよりもはるかに多くのことがわかります。
Q:アローシャフトについてもう一つ質問が来ています。カズンズ選手はX23(2315)の矢に160グレインポイントを使用していますが、その理由とどうやっては何でしょうか?この質問者自身は160グレインを試してみたところ、ポイントが軽すぎてミスに敏感になったと感じているようです。
D:そうだね、まずどうして(160グレインポイントを)使っているかを説明する前に、以前アルミニウムシャフトで射っていた時、いつも2315を29インチにカットして200グレインのポイント、3~4インチのベインで57ポンドの弓で使用してきました。いつもチューニングはぴったり合い、非常にタイトなグルーピングをもたらしてくれていました。(オールカーボンの矢を使っていた時期を挟んで)1年半くらい前に再びアルミニウムの矢を使い始めた時、アルミ矢で出た最初の試合は2019年11月の「キングズオフアーチェリー」だったと思いますが、その試合のために過去のデータから、私の標準ともいえる2315の29インチ、57ポンド、200グレインポイントという矢を作製しました。(ペーパーチューニングで)完ぺきなブレットホールが開き、ベアシャフトも完璧でした。「すごい、昔と同じだ」と思い、これで行くことにしました。
 ところがスコアは問題ないのですが、グループの中心が密じゃない気がしました。私の矢が軟らかすぎるのか硬すぎるのかわかりませんが、私はポイントを入れ替えて、グルーピングの中心がどう変化するかを見てみました。するとスコア全般を見ると変化はなく、インナーテン採点で596、597、598、599、600と590点台後半以上のスコアをいつでも射てる感じでしたが、X(インナーテン)リング内にシャフトが半分以上入っている矢の数とXリングにシャフトが半分以下しかタッチしていない矢の数が違うことに気がついたのです。そこで実際にデータを集めてエクセルで集計してみました。200、220、175グレインは手元になかったので160グレインの3種類のポイントを射ち、それぞれ射った矢数と10点の数と9点の数、そしてインナーテンについてはシャフトが半分以上入っている数、シャフト半分以下しか10点リングに入っていない数の全てのデータを入力して、エクセルで集計しグラフ化してみました。棒グラフで見ると、より良いグルーピングを射つためにはどのポイントにすべきかがすぐに視覚的にはっきりと見えてきました。
 そこで私はこれらの矢がチューニングでどう出るかを試してみました。200グレインポイントが依然チューニングでは一番良い状態でした。200グレインよりも重いポイントでは、矢が少し軟らかく出ました。ベアシャフトが1、2インチほど(羽根の付いた矢から左右)どちらかに離れました。200グレインより軽いポイントではベアシャフトは1インチほど(羽根の付いた矢から左右)どちらかに離れました。ベアシャフトチューニングやペーパーチューニングでは、最高の精度を発揮するためにその矢が硬すぎるのか軟らかすぎるのかを判断することは実際には無理だと思いました。
 基本的に問題ない程度までチューニングを行い、あとは実際に距離を射ってグルーピングのデータを取って分析することです。データを視覚的にわかりやすい形式に変換してみれば、問題がどこにあるかたちどころに診断できます。そういう分析の結果として、160グレインポイントを射つことにしたというわけです。
 このポイントの選択に関して反省すべき点があるとすれば、アーチェリーを長くやりすぎているせいで、最後にアルミニウム矢を使ったのが10年ほど前で、そのころと弓具が違うということを忘れていたことです。当時の私の弓は今の弓(スープラフォーカス)よりもはるかにスピードが遅いので、今の弓に合わせるためには(当時のものより)軽めのポイントか硬めのスパインのシャフトが必要なことぐらい天才でなくともわかりそうなものですが、(アルミ矢に戻した時の)私は完全に見過ごしていました。経験値が豊富すぎるのも考えもので、重要なことを忘れがちです。今の弓は私が前にアルミ矢を射っていた10年前の弓よりもかなりスピードが速くなっていることを考えれば、硬めのスパインのシャフトにするか、軽いポイントにするか、あるいはピークウエイトを落とす必要があることはわかりきったことですね。私は軽いポイントという選択肢を取りましたが、グルーピングやスコアは変わらないものの、グルーピングの中心が密になりました。
 これまでお話しした弓のチューニングや矢のチューニング、矢の作り方によって私たちは何を達成しようとしているのでしょうか。それは良い射ができなかった時に、ミスがより小さくなる(矢が逸れる距離がより短くなる)ように機械的な要素を(自分の射ち方に合わせて)整えておくことなのです。あなたがどんなレベルのアーチャーであっても、サンデーアーチャーであろうとローカルレベルであろうと全国レベル、ナショナルチームレベル、ワールドクラスのプロフェッショナルアーチャーであっても、必ず悪い射をすることがあるものです。経験や能力に応じて悪い射をすることはすくなくなりますが、それでもやはり悪い射をすることはあるものなので、弓の状態をミスがより小さく収まるようにしておかねばならないのです。
ミスを最小限に抑えるためのトルクチューニング

 国際大会でも地元の試合でも、「しまった。やってしまった!」というような明らかにミスショットをした選手の矢が的の真ん中に刺さっている、というシーンを誰もが見たことがあると思います。「なんてこった!あんなので当たるなら、俺も毎回あんなひどい射ち方するのに」なんて思ったことがあるのではないでしょうか。良い射ち方でなくても当たったのは、ほんの少しでもミスが小さく出るように弓具を自分の射ち方に合わせてあればこそなのです。時にはわずかなミスは当たっているのに等しいと言えます。シャフト半分10点から外れていても、完全に10点リング内に当たっているのと同じ価値があるのです。(ミスを最小限に抑える)調整はペーパーチューニングやベアシャフトチューニングではできません。コンパウンドボウの場合、弓の設定が正しくできており、(レストやノッキングポイントやカムなど)調整が合っていれば、どんなスパインの矢でも(ペーパーチューニングやベアシャフトは)射ててしまいます。問題は的上で何が起きているか、うまくいかなかった射のはずれをどれだけ小さく抑えられるかということなのです。
今回はここまでです。私がコンパウンドを始めたころ…25年くらい前は、ペーパーチューニングやベアシャフトチューニングはやらなくて良いという風潮でした。当時、デイブ・カズンズ選手に聞いた時もレストの位置やカムタイミングを変えてグルーピングが小さくなるかどうかでチューニングすることを推奨されました。最近になってペーパーチューニングやベアシャフトチューニングがよく話題に上るのは、カズンズ選手も指摘していましたがSNSの発達が大きくかかわっている気がします。
 私もSNSに自分のペーパーチューニングの画像をアップしています。決してそれで最高のチューニングができたとは思ってはいませんが、きれいなブレットホールが開くと、それなりに満足感があり、写真を撮って悦に入っていたのは事実です。
 次回はスコープについて取り上げます。倍率、ファイバーかドットか?など、スコープを選ぶ時のポイントについて解説していきます。