~コンパウンドボウの選び方のポイント

みなさんこんにちは。世田谷店の種部です。
コンパウンドボウを選ぶ時に最も重要な要素のひとつがカムではないでしょうか。カムのサイズや構造によって引き尺が決まるので、自分に合ったサイズのものを選ぶのはもちろんですが、カムのデザインによってドローイングのフィーリングやエイミング中の安定感が異なるので、自分の射ち方や体力に合わせて選ぶことが快適なアーチェリーライフの鍵です。

例えばPSEのニューモデル、スープラRTXにはSEカムとEMカムの2種類が用意されています。SEカムはスムーズなドローイングとスピードのバランスが取れたカムで、インナーカムに設けられたドローストップパーツを調節することでレットオフ率を65%、70%、75%(別売のハイレットオフモジュールと交換すると80%、85%、90%)の三段階に切り替えられるのでホールディング時のカムが戻ろうとするトルクをハードにしたり、楽な感じにしたり自分の好みに合わせてカスタマイズすることが可能です。
EMカムは短い引き尺でも十分なパワーが引き出せるよう設計されたカムです。カムの引き起こしはSEカムに比べて固い感じがしますが、引き尺が短いアーチャーにとってはそれほど気にならないくらいの変化かもしれないので、スピードが速いというアドバンテージが大きいと思います。ここで引き尺が長い・短いという分岐点は28インチが目安です。
コンパウンドボウのスピードについて注意しなければならないのは、カタログの数値は60ポンドとか70ポンドの弓を30インチの引尺で発射した時のものであるという点です。スピードは引尺に大きく左右され、長いほど矢を長く加速しているので当然スピードは速くなります。さらにカムの引尺設定によってもスピードが変わり、引尺調整モジュールを装備したカムでは、引尺設定が短くなるほどスピードが遅くなります。引尺が短いアーチャーにとってはカムの効率は大きなポイントになると思います。

SEカム

EMカム

私は引きやすさを重視しているので、スープラフォーカスもサイテーションもSEカムを選びました。若くて練習量も多かったころはホイットのスパイラルXカムのようなスピード系のカムを使用していたこともありますが、10年くらい前に全日本フィールド選手権の予選のきつい射ち上げのポストで引き戻されてMを射ってから、引きやすさ重視のカムを選ぶようになりました。

引きやすさを考えるときに、私が重視しているのは引き始め(カムの回り始め)がきつくないことと、カムが止まる直前の強さの変化が緩やかであることです。引き始めがきついと姿勢が崩れたり、腕に余計な力が入りやすかったりするので、毎回同じフォーム、同じ力のかけ方で弓を引き分けることが難しくなります。また、カムが止まる直前に弓の強さが急激に落ちると、カムが回りきった時に勢い余って押手や引手がぶれるので、アンカーリングやサイトが的に納まるのに余計な時間がかかってしまう恐れがあります。
スピード系のSVXカム

アメリカのトップシューターの多くが重視しているのが、ホールディング時のカムのトルクです。彼らはレットオフ率が低く(=ホールディングウエイトがあまり落ちない)カムが戻ろうとするトルクが強いものを選ぶ傾向があります。その方がしっかりテンションをかけてホールディングできるのでサイトの動きを小さくコントロールしやすいと言えます。また、伸び合いが甘いと戻されそうになり、ちゃんとホールディングできているかどうかカムが教えてくれるので、ミスショットを防ぐことができるという点が選ばれるポイントです。

デイブ・カズンズ選手はプライムの弓を使用していた時にカスタムメイドのドローストップを取り付けてレットオフ率を下げて使用していましたし、レオ・ワイルド選手やベガスシュート2連覇中のカイル・ダグラス選手はホールディングウエイトが25ポンド以上もあるようです。
レットオフ率に関連することでもう一つ重要なポイントが、ホールディング時にカムが戻ろうとするトルクの大きさです。前述のスパイラル系のカムは実は引きやすさの二つの条件をほぼ満たしているのですが、全体的に負荷が大きく、とくにホールディング時にカムが戻ろうとするトルクが大きいのです。カムが戻ろうとするトルクについては、単純にレットオフ率では比較できません。カタログ上ではレットオフ率が同じでも、カムのデザインによってバレーの幅が短いものとそうでないものがあるのです。同じ75%レットオフでもマシューズのTRXシリーズのC3XカムとHOYTのDCXカムでは、戻ろうとするトルクの感じは異なります。カムのフィーリングは実際にショップで試し引きしてみるのが一番です。
スープラRTXを使用するステファン・ハンセン選手

渋谷アーチェリー世田谷店ではHOYT、マシューズ、PSEの主なコンパウンドボウを試射できます。コンパウンドボウ選びに迷っている方、買い替えをお考えの方は世田谷店へご相談ください。