カルノスタビライザーテクニカルノート②

第二話 ~ちょうどよい硬さって?~
スタビライザーの硬さが変わると、どんなことが起こるのでしょうか?
アーチャーの皆さんが“硬さ”と聞いたら“矢のスパイン”が真っ先に浮かぶのではないかなぁと思います。
ACEの430と1100を手に取って少し曲げてみれば硬さの違いははっきり分かると思います。
スタビライザーは矢に比べればずいぶん太いので手で曲げてみてもなかなか分かりませんが、
メーカーや種類によって硬さの違いはあります。
この↓動画を見て下さい


2本の針金はスタビライザー、黄色と白のクリップはウェイト、指で弾くのはリリース と思って下さい、
左側の針金の太さは0.5mm、右側は1mmです、右の方が硬いです、
かなり揺れ方が違います、柔らかい方は大きくゆっくりで、硬い方は小さいが速く揺れます。
このモデルは見た目に硬さの違いを分かり易くしているので極端ですが、
柔らかめのスタビと硬めのスタビでも揺れ方の違いはこの動画のような傾向になります。
これだけ見ると硬い方が良さそうに見えますが、過去のテスト結果から、硬すぎるスタビライザーは
振動が逃げてくれないので弓で発生した振動の多くがアーチャー側に伝わってしまうことが分かっています。
この動画のモデルだと下にある金属製の土台を手で持っていたらどんな感じが伝わってくるか?に当たります。
柔らかいと揺れが大きくなる→真っすぐ飛び出す感じは得られ難い
硬すぎるとアーチャーに振動が伝わってくる→フィーリングが悪くなる、弓具へのストレスもかかる
のではないか?と考えました、やっぱり曲げに対するちょうど良い硬さを見つける必要があります。
またもう一つ“ねじれに対する硬さ”も考えないといけません。
さあどうしよう?まずは売られている主なスタビライザーの曲げとねじりに対する硬さを調べることにしました。

とあるスタビ(A)は曲げに対する硬さが(170.3)、ねじりに対する硬さが(36.85)
またあるスタビ(B)は曲げに対する硬さが(126.1)、ねじりに対する硬さが(48.48)
さらに別のスタビ(C)は曲げに対する硬さが(202.8)、ねじりに対する硬さが(10.98)
(全てセンターロッドです)
こんな結果が出ました、数字は大きい方が硬いことを意味します。(実際にはもっとたくさんの種類を調べています)
かなりバラつきがありますが…出てきた数字と、そのスタビを実射テストした結果に基づき
まず最初の希望の数値を決めて試作してみることにしました。
軽くする工夫もしないとなりません
センターロッドはこんな↓断面形状を考えました。

(注:この図は分かり易くするため実際よりもデフォルメされています)
根元側は厚さがあり、当然硬さもあります
途中で斜めの部分がありここで厚さが変化し薄くなります
先端側の薄い部分は厚い部分よりも柔らかくなるのでここがある程度揺れて振動を逃がし
厚い根元側はあまり揺れない、そして全部を厚くするよりも軽く出来る。
そういう狙いです。
これをDDST(Dual Diameter Spine Tuning)と呼ぶことにしました。
センターロッドのちょうど良い硬さは、根元側と先端側で違うのでは?!
がこの時点での予測になります。
—————————————————————-
第二話のものすごく短いまとめ
◇スタビは硬すぎも柔らかすぎも良くない、今あるスタビの硬さを調査した。
◇曲げに対する硬さはもちろん、ねじりに対する硬さも考えよう。
◇センターロッドは“根元は厚く、先端は薄く”し硬さ・軽さ・静かさの3つを狙う!
—————————————————————-

〔次回 第三話~エクステンダーとサイドロッドは?~ に続く。〕