カルノスタビライザーテクニカルノート④

第四話 ~試作とテストはどうやるの?~
今回、新たにスタビライザーのカーボンパイプを共同で開発して頂くのは
ゴルフクラブ用カーボンシャフトのトップメーカー、“フジクラ コンポジット”さんです。
フジクラコンポジット Webサイト
http://www.fujikurarubber.com/
ゴルフをやる方にとっては改めて説明する必要はないと思いますが、
ゴルフクラブのシャフトの部分の専門メーカーになります。ヘッドは作らず、シャフトのみを作っています。
渋谷アーチェリーと同じく、スポーツ用品のメーカーで、トップ選手が使う道具を作って来た会社です。
そんなフジクラさんにはこちらの要望もよく分かって頂くことが出来ました。
もちろんアーチェリーのスタビライザーはゴルフのシャフトと違うところも多く、
こちらからアーチェリーで必要になる特性を詳しくお伝えしないとなりません。
またカーボンパイプについて我々が知らなかったこともあり、それらを学習しつつ、試作品の詳細を決めていきます。
数回の打合せを経て、試作の詳細内容を決め、最初の試作品が出来上がりました。
材質、DDST構造の厚さが切り替わる位置、などが違う数種類のカーボンパイプを作りました。
別途新規に設計試作したブッシングを接着しスタビの形にして、まず僕自身が射ってみます。
新しいことにチャレンジしているので、この段階でどうしようもなくダメダメな出来のことももちろんあります。
その場合はこれまでの構想・立案を見直し、試作をやり直さないとなりません。
なのでこの瞬間が弓具を開発する中で一番楽しみでもあり、一番不安でもあります。
この時は、イマイチなところもありましたが、まずまずの感触でした、重さも期待通りの軽さになっていました。
社内のスタッフに長期のテストを依頼出来るレベルにはなっているであろうと判断し
当時のスタッフの中から、浅田くん、宮原くん、早川さんにテストを依頼しました。
(全員でテストが出来ると良いのですが、リスクもある試作品を全員分作る訳にもいかないためまずは3人に絞ってテストをします。)
●浅田くんはその経験から沢山ある他社のスタビライザーとの違いを見極めて、試作品のポジションがどのあたりになるのか?といった相対的な評価を
●宮原くん、早川さんにはトップアーチャーとして自身が使用するのに、どういったところが良く、どこが不満か?といった絶対評価を依頼しました。
そして、数種類ある試作品のうち、静かさの尺度ではどういう順番になり、ソリッド感(硬さの感じ)ではどういう順番になるのか?などもレポートしてもらいます。
↓これは2012年8月の写真ですが、宮原くん、早川さん共に試作品を使用しています。
http://shibuya-archery.com/blog_proshop/?p=3152
並行して試作品の実際の曲げ剛性・ねじり剛性がどれくらいか?も調べます。
実射テスト・剛性テストの内容を見て、次の試作を行い、またテストをして…を繰り返していきます。
試作の依頼から量産に至るまで、フジクラさんとは十数回の打合せを行い仕様を詰めていきました。
テストしていく中で、最後まで残った課題が「ソリッド感は充分だが、振動減衰性がちょっと足りない」でした。
内部に振動減衰性のある素材を詰めることも考えましたが、重くなるので違う方法を模索しました。
フジクラさんとも相談したところ
『DDSTで狙っている「根元と先端で硬さを変える」のをもっと進めて「根元にはより強い素材、先端側には少し柔らかい素材をブレンドして硬さの差をより出す」』
ことで解決出来ないか?との案が浮上し、これを盛り込んだ数種類の試作をし、テストを行ったところ性能向上が見られ、期待したレベルに到達しました。
この「センターロッドの根元側に強い素材を、先端側には少し柔らかい素材をブレンドする」ことをVBC(Vari-Blend Carbon)と呼ぶことにしました。
この頃から、テストは3人だけではなくより多くの方に依頼しています。
全部ではありませんが、テストしたセンターロッドの試作品達です。

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第四話のものすごく短いまとめ
◇カーボンパイプはゴルフクラブ用カーボンシャフトのトップメーカー“フジクラコンポジット”との共同開発。
◇最初の試作品を試す時はかなりドキドキ、その後はスタッフのみんなでテストをする。
◇強い素材と柔軟な素材をブレンドした新たな技術を取り入れた!
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〔次回 第五話~デザインとカラバリは?~ に続く。〕