~HOYT フォーミュラXDハンドルの秘密
投稿:2022年9月4日今話題のHOYT【フォーミュラXDハンドル】について、HOYTのリカーブ製品の開発者のダグラス・デントン氏、トップアーチャーのブレディ・エリソン選手、HOYTターゲット製品マーケティングディレクターのスティーブ・アンダーソン氏の3人がトークしている動画がアップされていますね。ブレディ・エリソン選手は、説明するまでもないかもしれませんが70mラウンドの世界記録保持者で国際大会の表彰台の常連ですね。ダグラス・デントン氏は日本でも講習会を行ったことがあるのでご存じの方もいらっしゃるとおもいますが、HOYTのリカーブ製品の開発責任者です。スティーブ・アンダーソン氏はコンパウンドのトップアーチャーですので、コンパウンドアーチャーの方々にはなじみの選手でもありますね。
【フォーミュラXDハンドル】は、競技用リカーブハンドルの傑作GMX以来HOYTの競技用リカーブハンドルに採用されているダイナミックフレックスコントロールとフォーミュラXiで定評のあるリムポケット部分に重量を配したダイナミックバランスデザインを継承しています。ドローイング~リリース時にハンドルが矢筋を通る面の中でハンドルの上下が同じようにしなるよう計算されたデザインであるということです。リムポケットがねじれたり、左右にぶれたりしないようハンドルの構造が計算されてデザインされています。
ダイナミックバランスコントロールはフォーミュラXiハンドルから採用されているデザインで、ハンドルの両端を重くすることで、ドローイング時にハンドルの安定感が向上し、リリース時のハンドルの挙動も安定するというもの。この辺りは最近のHOYTハンドルの流れを継承しているといえます。
では競技用リカーブハンドルの次世代モデルとして登場した【フォーミュラXDハンドル】ですが、これまでのリカーブハンドルと何が違うのでしょうか?実はこれまでのフォーミュラーシリーズもグランプリシリーズも、さらに言えば他のメーカーの競技用リカーブハンドルもほとんどがHOYTの創業者アール・ホイット氏が90年代にデザインしたゴールドメダリストのジェオメトリーから大きく変化していませんでした。リムの接合方式に至っては、HOYTのフォーミュラシリーズで大幅なアレンジが加えられた以外はゴールドメダリストで初めて採用されたダブテイルリムポケットのままと言って良いでしょう。
一方でリカーブリムは素材や製造技術の進歩により大きく進化しており、アロースピードが格段に速くなっています。このため10年くらい前と比べてより硬いスパインの矢が必要になっていると言われています。エリソン選手によると10年くらい前は50ポンドのリムでX10の410番を使っていたのが、今は48ポンド前後のリムで350 番を使っているということです。は2サイズ硬いスパインが必要になっているということは弓の強さで言うと8~10ポンドくらい強くなったのに相当すると言えるので、リムの進化による高速化はかなりのものですね。そしてリムの進化は単により硬いスパインの矢が必要というだけでなく、リリースの瞬間にノックが下方向に押されてアローシャフトが上下方向にしなる「バックリング」と呼ばれる現象がみられるようになっているそうです。バックリング現象により、フィンガーリリースによる矢の水平方向のしなり(いわゆる矢の蛇行現象)に上下方向の矢のしなりが加わることで、プランジャーとアローシャフトがうまくコンタクトしにくくなるため、チューニングが難しくなってしまうという問題につながっているのです。
この問題を解消するため、【フォーミュラXDハンドル】ではハンドルデザインの大幅な見直しが行われました。グリップの位置を下げて、矢が弓の中心近くを通る設計になっています。グリップのピボットポイントとプランジャーホール、サイト取付用のネジ穴の位置関係は従来モデルと変わっていません。
従来のハンドルデザインでは弓の中心より高い側を矢が通過しており、リリース時にノックが下方向に押される力が働きやすかったため、バックリング現象の要因となっていました。【フォーミュラXDハンドル】ではグリップ位置を下げて矢が通過する位置を弓の中心に近づけたため、リリース時にストリングがノック押し出す際にかかる力がじょうげにずれにくくなり、ノックをまっすぐ押し出すことが可能になっています。グリップ位置を下げたことによるもう一つのメリットは、ハンドルのグリップから上の部分が長いことにより、ドローイングしてきた時にグリップのピボットポイントに力が集中しやすくなり、自然に押手を的方向に伸ばして弓をしっかり支えられるという点です。実際に試射したアーチャーのほとんどがドローイング時のサイトピンの動きが小さくなったと感じています。
【フォーミュラXDハンドル】はフォーミュラーシリーズの中では最もサイトウインドウが広く、これまでフォーミュラシリーズハンドルで高ポンドの男子選手の場合に18m以下のサイトがサイトウインドウ内に収まらないことがあるという問題が解消されています。
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