～高精度・高品質競技用アローの原点、イーストンA/C/E。
投稿：2022年12月4日1988年のソウルでゴールドメダルを獲得した【イーストンA/C/E】はその軽さと精度の高さで、それまでのカーボンアローと一線を画すものでした。
A/C/E以前のカーボンアローと言えばフランスのBEMANというメーカーのオールカーボンシャフトがメジャーでした。細くて軽くて、価格も当時のアルミニウム/カーボンよりかなり安かったので人気がありました。ただオールカーボンのシャフトはアルミ矢のようにきれいにしなりにくく、非常に重いポイントを使用するなどチューニングに一工夫が必要でしたし、均一性に難点があり使いこなすのは難しいと言われていました。
均一性
当時のオールカーボンシャフトは現在のようなカーボン繊維を巻き付けたものではなく、プルトルージョン製法というカーボンの糸を型を通して引き抜き成形する工法で作られていました。このため今のオールカーボンシャフトよりもシャフトの内径の精度が悪く、均一なものを作ることが難しかったのです。内径が均一でないためポイントやノックの取り付けがたいへんで、最初のころはポイントを接着する際にセンターがずれないようにする治具が必要でしたし、ノックはインサートタイプではなくアウトサートタイプしか使えませんでした。作製に手間がかかるという点はさておき、オールカーボンシャフトの最大の問題はシャフトの肉厚が均一でないために、スパインが360度均一でなかったという点です。
リカーブボウで射つ場合、上の図の右のような360度均一ではないシャフトではプランジャーと接する面によって矢のしなり方が変わるため、矢が飛んで行く方向も変わってしまいます。ミスの影響がより拡大され、グルーピングは広がってしまいます。均一に作るという点については、現在でもカーボンという材質の特性から、重量を均一に保ちながら硬さ（スパイン）を均一に保つことは、もともと均質で加工もしやすい素材のアルミニウムに比べると難しいのです。
【イーストンA/C/E】は小口径の高精度・高強度のアルミニウムシャフトにカーボン繊維を巻き付けたハイブリッド構造とすることで、均一性の問題を解消しています。素材として均一性が高く加工高精度も高いアルミニウムコアを採用することで、シャフトの内径を高い精度で量産することが可能になり、スパインの均一性も飛躍的に向上しているのです。そしてインサート方式のポイントやピンインサートのシャフトへの取り付けも高い精度で接着できるため、均一な完成矢を作製することができます。ノックがまっすぐに取り付けられるかどうかは、矢の精度に致命体な影響を与えます。リリースしたというのもストリングを介して弓のエネルギーを受け取るのはノックるため、羽根を貼って完成矢にする前にベアシャフトを射ってノックの向きをチェックするというトップ選手もいるくらいです。
樽型形状
長距離で有利な圧倒的なスピードの速さをもたらすシャフトの軽さは、カーボンという素材と樽型形状の組み合わせによるもので、ポンドがあまり強くなくて引き尺が短い女子でも容易に長距離を射つことが可能になりました。
【イーストンA/C/E】の開発に携わったイーストン社のドン・ラブスカ氏によると、より速く遠くへ飛ばすための工夫として樽型形状のアローシャフトが11世紀のトルコで使用されていた記録が残っており、樽型というアイデアは矢の歴史の中で目新しいものではないとのことです。イーストンの創業者であるダグ・イーストン氏は、1920年代に異なる木材を組み合わせた樽型ウッドアローを作っています。比重の重い木材をポイント側、軽い木材をノック側に配することで、長い距離を飛んだ時に失速しにくいバランスのシャフトにするための工夫でした。
この樽型シャフトを現代の最先端の素材と加工技術で競技用シャフトに進化させたのが【イーストンA/C/E】なのです。ただ単に軽くてスパインが硬いだけでなく、360度方向のスパインが均一で、1本1本のシャフトの均一性も非常に高い樽型アローシャフトを量産することに成功しました。
また樽型形状にすることで、レストをクリアするための適度なしなりを生み出し、しなりの誤差を軟らかい後端部分である程度吸収することができるため、リリースのばらつきを拾いにくいというアドバンテージも持ち合わせています。
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