~Cコードの違う矢を混ぜて射ってはだめですか? Part 2
投稿:2022年12月14日前回のブログの続きで、イーストンの競技用アルミニウム/カーボンアローに刻印されているウエイトコードについて、ジョージ・テクミチョフ氏の解説を紹介していきます。スパインを均一にすることとシャフトを任意の重量カテゴリーごとに分けてウエイトコードで管理することがどうつながるのでしょうか?
アルミニウムとカーボンの素材特性の違い
ウエイトコードの意味を理解する上で、アローシャフトを作るための材料について説明が必要です。材料の単位重量当たりの剛性(硬さ)を数値化したものとして、ヤング率あるいは弾性率と呼ばれるものがあります。この弾性率というものが、完成品としてのアローシャフトの硬さ、すなわちスパインを左右します。
純粋に均一性だけを考えるなら、アローシャフトの材料としてアルミニウム合金に勝るものはありません。アルミニウム合金という素材は非常に安定した弾性率を有しており、生産ロットによる個体差がほとんどありません。例えばXX75シャフトに使用されている7075アルミニウム合金の弾性率は10,400,000psiで、それが1964年に製造されたものもであっても今年作られものであっても、その材料の弾性率は同じです。同じサイズのXX75シャフトのスパインは1964年に作られたものも今年作られたものも全く同じで、矢として非常に高い均一性を持っていると言えます。
カーボンという素材に由来する問題
ところがカーボンの場合はそう簡単ではありません。カーボンアローを構成しているのはカーボン繊維とそれらの繊維を一体のものにまとめるために使われる樹脂です。現在流通しているカーボン繊維の場合、単位重量当たりの剛性は+/-2,000,000psiのばらつきがあり、この差異は競技用の矢の素材としては見過ごせないくらい大きいものなのです。例えばカーボンアローの上位モデルに使用される一般的なカーボン繊維の弾性率が46,000,000psiとすると、矢のメーカーが材料に潜在的に含まれているばらつきをコントロールする手間を惜しむと、完成した矢の弾性率のばらつきは44,000,000から48,000,000の範囲まで広がってしまい、競技用の矢としては許容しがたい誤差になってしまいます。
さらにカーボン繊維を素材として形成するために使われるエポキシ接着剤やその他のポリマー樹脂によっても、弾性率の個体差が生じてしまいます。カーボンに含まれる樹脂の割合が厳格な精度で管理されなければ、「体積弾性率」が均一なカーボン材料を作ることはできません。カーボン繊維とエポキシのように2種類の材料を組み合わせた材料「カーボンコンポジット素材」では、カーボン繊維と樹脂の比率は製造行程や素材そのものの誤差の影響を受けます。アローシャフトの作製を開始した時点での素材の鮮度すらも、出来上がった製品の剛性を大きく左右する可能性があります。
素材自体のばらつきは、製造行程で生じてしまう誤差によりさらに拡大され、製品としてのアローシャフトのスパインに大きな影響が出ます。実際に市場に流通しているカーボンアローの中には、スパインが均一でないものも見受けられることがあります。
均一なシャフトのためのイーストンの取り組み
体積弾性率の均一性はアローシャフトの精度にとって非常に重要なものなので、イーストンでは材料や製造行程に由来するばらつきを最小限にとどめるための特別な対策を講じています。
- 均一性の高い厳選された素材を仕入れる。
- 厳選された素材を製造工程の中でも均一性が保たれているかチェックをかける。
- 一貫生産体制:全ての工程をソルトレークシティの自社工場で一貫して行う。
スパインの均一性を優先
最高品質のカーボン繊維材料を使用して、製造過程の不確定要素をきめ細かく管理していたとしても、カーボンシャフトの完成品のばらつきを完全に排除することは難しいと言えます。アローシャフトの完成時の重量を均一にすることを優先すると、スパインの数値のばらつきには目をつぶることになります。この製法では、この記事のPart 1で取り上げたようなスパインのばらつきによるパフォーマンスの問題をかかえることになります。
イーストンでは、リカーブアーチャーにとって最も大切な要素「スパイン」を優先して均一なシャフトを製造しています。ACEやX10などの競技用モデルのスパインの許容差は(360度全周方向で)+/-0.0015インチ(0.0381ミリ)です。イーストンでは一本一本のシャフトを決められた通りのスパインになるように正確に加工し、その後でもうひと手間かけて個々のシャフトの重量を計り、重さに応じてグループ分けしています。それがウエイトコードの分類です。
ウエイトコードによって管理されていることの利点の一つは、例えばX10のC.2とC.3のような隣り合った二つの異なるウエイトコードのシャフトを混ぜて射ったとしても、重量のばらつきが微少なので実際に使用したときにグルーピングに悪影響が出ることはないことが数値によって裏付けられているという点です。イーストンは、エンドユーザーが常にスペック通りのスパインのアローシャフトを手に入れられることを目指して、矢の精度にとって極めて重要なスパイン(の均一性)のために、他のメーカーには真似できない厳しい生産管理を行っています。そのひとつがウエイトコードによる分類管理なのです。
イーストン独自のウエイトコードによる製品管理によって、常に同じスペックのアローシャフトを提供することが可能になっています。ウエイトコードは、今日あなたが買ったアローシャフトと以前に買ったアローシャフトが全く同じスペックであることはもちろん、あなたが将来買うであろうアローシャフトも同じものが手に入ること保証するためにイーストンが講じている様々な方策のひとつなのです。
イーストンの競技用アルミニウム/カーボンアローが、1984年以降の全てのオリンピックチャンピオンに選ばれている大きな理由は、こうした様々な努力によって「均一性の高さ」が保証されているからではないでしょうか。
補足:ワンシーズン使用したシャフトは摩耗によりシャフト重量が軽くなっています。シャフトの消耗による重量の変化の方がCコードの番号違いの重量差よりも大きいので、同じCコードのシャフトを選んでも、ワンシーズン使用した矢とシャフト重量を揃えることはできないので、どのCコードを選んでも問題はないと言えます。
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