~コンパウンドがオリンピック種目に追加される時が来る?

投稿:2023年6月1日

今回紹介するのは5月29日にWAのホームページアップされた「Is the time right for compound archery to join the Olympics?」という記事の要約です。果たしてオリンピック種目にコンパウンドが加わる日が近いのでしょうか?

ワールドアーチェリーからコンパウンドを夏季大会の競技種目に追加する申請が提出された今、もしかすると2028年のロサンゼルス大会にコンパウンドアーチェリーが追加される可能性が出てきました。

最終的にはIOC(国際オリンピック委員会)の裁定にゆだねられていますが、採用される見込みが高くなければ申請を行うことはなかったでしょう。

世界最大のスポーツイベントにコンパウンドが追加される可能性が高まっていると考えられる理由いくつかあります。

1.大物コーチの移籍
最近韓国は初めて国外からコーチを招聘しました。元世界チャンピオンのレオ・ワイルド氏(アメリカ)が今年の初めに韓国ナショナルチームのコーチングスタッフに加わり、コンパウンド部門のヘッドコーチに就任しました。

韓国はリカーブの分野においては抜きんでており、かなりの期間にわたってオリンピックの表彰台を独占してきました。コンパウンドにおいてはナショナルチームの歴史は浅く、10年ほどしかなかったのですが、49歳の外国の専門家レオ・ワイルド氏を招へいするという英断が、韓国の(コンパウンドに対する)真剣さを明確に表しています。

外国からコーチを招聘する動きは韓国だけではありません。セルジオ・パニ氏(イタリア)は2023年度インドのコーチをしており、2023年のヒュンダイ アーチェリーワールドカップ2大会でインドチームは2つのゴールドメダルを獲得しています。

2.高い競技レベルと男女平等であること
コンパウンドアーチェリーの本質はパーフェクトを達成することにあります。心身を完璧にコントロールし、プレッシャーの中で優れたパフォーマンスを発揮することが求められます。

コンパウンドアーチェリーの歴史を見ると、競技自体とは全く関係のない要因で、女性が少なく男性中心の競技でした。しかし過去10年間の女性コンパウンドアーチャーの競技レベルの飛躍的な向上と、競技人口の増加は劇的なものがあります。その象徴が史上最高と称されるサラ・ロペス選手の活躍です。

サラ・ロペス選手はレオ・ワイルド選手の男子コンパウンドの(50メートル15射マッチラウンドの)世界記録に匹敵する150点満点で12Xを昨年のメデジンで行われた大会の決勝ランドで射っているのです。しかも7年前から続いていたサラ・ロペス選手の独壇場という時代は終わり、今や国際大会では女子コンパウンド部門が最もエキサイティングで競技性が高くなっているカテゴリーと言えるでしょう。

ちなみにロサンゼルス大会では、コンパウンドアーチェリーは男女が肩を並べて競い合う男女混合種目として申請されています。

3.人気の高さ
コンパウンドボウは1960年代にアメリカで、従来のリカーブボウよりも機械的に効率の良い弓具として開発され、アメリカ国内では広く普及して現在に至っています。国際大会の場で受け入れられるようになったのは1995年の世界選手権でコンパウンド部門が設けられてからですが、その後の30年間でアメリカ以外の国でもコンスタントに競技人口が増えて広まってきました。

今夏のヒュンダイ アウトドアターゲット世界選手権ベルリン大会では100近い国が参加しますが、その内70%以上の競技者がコンパウンドアーチャーです。

今やコンパウンドという形式の弓は世界中で愛好されていますが、2028年のオリンピックの開催地であるアメリカでのコンパウンド人気は非常に高いものがあります。世界的に有名なベガスシュートでは2023年の参加者3911人のうち60%がコンパウンドでした。そしてベガスシュートといえば恒例のメインイベント(トッププロによるシュートオフ)ですが、あの息をのむようなファイナルがオリンピックという最高のステージで行われるところを想像してみてください!

4.各大陸の大会への広がり
コンパウンド競技は、主な大陸の(オリンピックのように複数のスポーツが行われる)競技大会に含まれるようになりました。6月に行われる欧州競技大会のポーランド大会ではコンパウンドの個人とミックス団体戦が開催され、欧州競技大会としてはコンパウンド競技が行われるのは2度目となります。また、チリで行われるアメリカ大陸競技大会でも、ヨーロッパ同様にコンパウンドの個人とミックス団体戦が行われる予定です。

そして杭州(中国)で行われるアジア競技大会では、史上初めてコンパウンド競技の個人、団体、ミックスの全種目が行われます。アジア競技大会では2014年と2018年にコンパウンドの個人戦は行われたのですが、今度の大会ではリカーブと同じく、男子個人女子個人男子団体女子団体ミックスの5つのカテゴリーでメダルが授与されます。(アジア競技大会のコンパウンド競技のメダル獲得は)インド、韓国そして中国のようなアーチェリー強豪国は、オリンピック(のメダル獲得)につながる布石としてアジア大会のコンパウンド競技を重要視しているようです。

5.試合形式
オリンピック競技におけるリカーブの試合形式は(1992年バルセロナ大会で導入された1対1の対戦形式から)長い間基本的には変わっていません。忘れられがちですが、オリンピックの夏季大会の競技種目として存続していくための価値を持ち続けるために、時代に合わせて変わっていくことが必要です。

では、コンパウンドにとってロサンゼルス大会はおそらくチャンスでしょう。というのも(今回申請された)18メートルインドア、男女混合種目という競技形式は、(リカーブの競技形式と比べて)新鮮で全く違うものなので(新たに追加される競技として)全ての要件を満たしていると言えます。

各国のナショナルチームがコンパウンド競技に真剣に取り組むようになっていて、プロ選手によるチーム編成や海外からの優秀なコーチの招へいを行うようになっています。この種目は全ての大陸に広まっており、いくつかのスポーツ振興国でも受け入れられていて、世界のトップクラスの競技レベルは卓越していて層も厚くなっています。そして最も優れた選手についていえば、シューティングラインに立った時、男女間の差はごくわずかしかありません。

そしてロサンゼルス大会に関して最も重要なことは、コンパウンド発祥の地アメリカで行われるということです。コンパウンドの人気が信じられないくらい高い国です。オリンピックにおけるコンパウンドアーチェリー競技は、アメリカ中の既にコンパウンドを射っている何百万人もの人たちの目を引くだけでなく、さらに多くの人の目を引き付けることが期待されます。

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以上がWAのコンパウンドがオリンピック競技に追加されるかどうかに関しての記事の要約です。18メートルインドアラウンドで申請されているというのは知っていましたが、この記事ではじめて男女混合競技ということを知りました。そう言えば数年前からベガスシュートで男子と女子のトップ選手のエキシビションマッチが行われていたのは、このための伏線だったのか、と妙に納得してしまいました。アーチェリー界が盛り上がるためにも、ロサンゼルス大会にコンパウドが採用されることを祈っています!