~ハンドル紹介その1:HOYTフォーミュラXD

投稿:2023年6月22日

発売以来表彰台の常連となっているフォーミュラXDハンドルは、競技用リカーブハンドルの傑作GMX以来HOYTの競技用リカーブハンドルに採用されているダイナミックフレックスコントロールとフォーミュラXiで定評のあるリムポケット部分に重量を配したダイナミックバランスデザインを継承しつつ、より進化した次世代リカーブハンドルです。

ダイナミックフレックスコントロールとは、ドローイング~リリース時にハンドルが矢筋を通る面の中でハンドルの上下が同じようにしなるよう計算されたデザインであるということです。リムポケットがねじれたり、左右にぶれたりしないよう計算されてデザインされています。

矢が通る面に平行にハンドルがしなるよう計算されたDFC設計

ダイナミックバランスコントロールはフォーミュラXiハンドルから採用されているデザインで、ハンドルの両端を重くすることで、ドローイング時にハンドルの安定感が向上し、リリース時のハンドルの挙動も安定するという構造になっています。

ハンドルの両端に重量を配分し安定性が向上したダイナミック バランス コントロール設計

競技用リカーブハンドルの次世代モデルとして登場したフォーミュラXDハンドルとこれまでのリカーブハンドルと何が違うのでしょうか?実はこれまでのフォーミュラーシリーズもグランプリシリーズも、さらに言えば他のメーカーの競技用リカーブハンドルもほとんどがHOYTの創業者アール・ホイット氏が90年代にデザインしたゴールドメダリストのジェオメトリーから大きく変化していませんでした。リムの接合方式に至っては、HOYTのフォーミュラシリーズで大幅なアレンジが加えられた以外はゴールドメダリストで初めて採用されたダブテイルリムポケットのままと言って良いでしょう。

一方でリカーブリムは素材や製造技術の進歩により大きく進化しており、アロースピードが格段に速くなっています。このため10年くらい前のリムと現在のリムでは、同じポンドのリムを比較した場合、現在のリムはより硬いスパインの矢が必要になっていると言われています。ブレディ・エリソン選手によると10年くらい前は50ポンドのリムでX10の410番を使っていたのが、今は48ポンド前後のリムで350 番を使っているということです。2サイズ硬いスパインが必要になっているということは弓の強さで言うと8~10ポンドくらい強くなったのに相当するので、リムの進化による高速化はかなりのものと言えます。そしてリムの進化によって単により硬いスパインの矢が必要というだけでなく、リリースの瞬間にノックが下方向に押されてアローシャフトが上下方向にしなる「バックリング」と呼ばれる現象がみられるようになっているそうです。バックリング現象により、フィンガーリリースによる矢の水平方向のしなり(いわゆる矢の蛇行現象)に上下方向の矢のしなりが加わることで、プランジャーとアローシャフトがうまくコンタクトしにくくなるため、チューニングが難しくなってしまうという問題につながっているのです。

グリップ位置が従来より低くなったフォーミュラXD

この問題を解消するため、フォーミュラXDハンドルではハンドルデザインの大幅な見直しが行われました。グリップの位置を下げて、矢が弓の中心近くを通る設計になっています。グリップのピボットポイントとプランジャーホール、サイト取付用のネジ穴の位置関係は従来モデルと変わっていません。

従来のハンドルデザインでは弓の中心より高い側を矢が通過しており、リリース時にノックが下方向に押される力が働きやすかったため、バックリング現象の要因となっていました。フォーミュラXDハンドルではグリップ位置を下げて矢が通過する位置を弓の中心に近づけたため、リリース時にストリングがノック押し出す際にかかる力が上下にずれにくくなり、ノックをまっすぐ押し出すことが可能になっています。グリップ位置を下げたことによるもう一つのメリットは、ハンドルのグリップから上の部分が長いことにより、ドローイングしてきた時にグリップのピボットポイントに力が集中しやすくなり、自然に押手を的方向に伸ばして弓をしっかり支えられるという点です。実際に試射したアーチャーのほとんどがドローイング時のサイトピンの動きが小さくなったと感じています。

フォーミュラXDハンドルのリムポケットにはフォーミュラXiやグランプリ エクシードで定評のある【ストリングテンションテクノロジー】に加えて、【360ダンパーシステム】【パーフェクトバランスウエイトシステム】【プロシリーズダブテイルブロック】などの新しい機能が追加されています。もちろんストリングを張ったまま調整が行えるセンター調整ブロックとティラーボルトを標準装備しており、初期設定やチューニングが容易に行えます。

フォーミュラXDハンドルはフォーミュラーシリーズの中では最もサイトウインドウが広く、これまでフォーミュラシリーズハンドルで高ポンドの男子選手の場合に18m以下のサイトがサイトウインドウ内に収まらないことがあるという問題が解消されています。

ハンドルの仕上げは【セラコート】という特殊な塗装で、ごく薄い皮膜で耐油性、スクラッチ耐性に優れたものです。他メーカーに比べると地味かもしれませんが、機能優先の仕上げ(塗装が厚いとリムポケットなど調整部分の精度が保てないため)となっております。

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